インターネット講座 -(4)-
桃太郎と鬼の研究


ゆがんだ社会解決の助っ人〜鬼退治の必要説 く物語〜

 日本は鬼だらけの国になったと言われる。そう言えば、昨今の社会 情勢はまさに鬼の仕業そのものだ。社会倫理の崩壊、金の亡者のは いかい、偏差値至上主義人間による財政界の不祥事、いじめの横行 など、鬼の支配する国そのものだ。今の日本は、「鬼主権国家」とも 揶揄(やゆ)される。

 なぜ鬼の社会になったのか、それは「モノの豊かさ」を追い求めたシ ステムに原因がある。豊かさの追求は個人として求められるものであ るはずだ。にもかかわらず日本人が生活の豊かさを感じられないの は、日本のシステムに起因しているからなのだ。カレル・ヴァン・ウォ ルフレンは著書『人間を幸福にしない日本というシステム』(毎日新聞 社刊)で「日本では民主主義はまだ実現していない。さらに日本人が 現実だと思っていることはほとんど幻想であり、幻想はただ現状維持 にだけ役立っている」と述べている。

 私たちは、鬼が支配する日本社会のゆがみを、鬼退治という形で解 決せねばならない。桃太郎はそのための助っ人なのである。

 鬼退治の前に、鬼とは何か調べてみよう。広辞苑では、「鬼とは(1) 死 人の霊魂、亡魂、亡霊で、目に見えないもの(2)恐るべき形をして、人 にたたりをするもののけ(3)想像上の生物、人身で牛角があり、口は 横にさけて、鋭いきばを有し、裸体で腰にトラのふんどしをまとい、醜 悪で怪力がある」と定義している。

 鬼という字は、中国の殷(いん)の時代に甲骨文字の死がいをかた どって現れる。鬼の姿は、時代により国により、宗教により異なるが、 日本では、鬼=隠「死ぬこと隠れること」としており、隠は怨(えん)か ら恨(うらみ)に通じている。

 鬼は本来目に見えないものであったが、古事記の中の鬼は死がい が 化けたものとなり、現在知られている鬼の姿は、室町時代後期、狩野 元信(1476-1559年)の創作であると言われている。

 鬼はこのように人間の醜い部分であり、私たちは常に鬼退治をして 行 かねばならない。桃太郎は日本人にその必要性を説く勇気ある物語 である。


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